1件目は成年後見制度について取り上げました。
成年後見制度とは、認知症等により判断能力が不十分な方を成年後見人が支援するものです。
平成28年に成年後見制度利用促進法ができ、それに基づき平成29年3年に基本計画が決定されました。
基本計画の主な点は、①利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善、②権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり、③不正防止の徹底と利用しやすさとの調和があり、本計画の中で市町村には様々な義務が課されています。
今回は、戸田市における現状と本計画への対応を伺いました。
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[提案内容]
(1)戸田市の現状について。
こんのQ 戸田市の現状は。
福祉部長A 65歳以上の高齢者数21,953人で、高齢化率15.9%。本市での主な取組みは、①地域包括ケアセンターでの高齢者権利擁護に関する相談は近年10件から19件程度で推移。②申立者がいない場合の市長申立て件数は近年1件から5件程度。③成年後見制度利用促進制度(在宅28000円/月、在宅外18000円/月)の利用者は5人。
こんのQ 現状について、確かに戸田市の高齢化率は県内で一番低いが、県調査によれば戸田市は一人暮らし高齢者が多い点が特徴であることを指摘したい。また、取組み①について、相談件数は十数件ということだが、全国で見ればここ10年間で市町村申し立ては全体の3%から全体の19%と約6倍と増えている。相談件数は十数件程度ではあっても、埋もれて発見できていない可能性があることを指摘したい。
取組み②について、本人申立て等を市は把握していないということだが、本計画では親族後見人等の相談機能を有することが求められているが、どのように対応するのか。出来る限り把握をした上で相談機能を担うべきでは。
福祉部長A 公開された公的資料がないため把握はできないが、相談機能は既に市等で対応をしており、申立てにつながった例もある。今後は総合介護福祉市民協議会や地域ケア会議等を活用し実情を把握し、体制整備についての検討を重ねていきたい。
(2)市町村による成年後見制度利用促進計画
こんのQ 市町村による成年後見制度利用促進計画の策定を。
福祉部長A 法律の中で市は計画策定の努力義務を課されている。今後国の工程表に基づき検討していくが、国の動向を注視し、先進市等の取組状況も把握しながら進めて参る。
こんのQ 計画策定については努力義務であるにもかかわらず、国の工程表に基づき策定するというのは非常に前向きな答弁と評価する。国の工程表によれば平成33年度までに策定を進めていくことになっているが、具体的な準備過程をお示しいただきたい。その際、志木市や川口市等の近隣の先進市の例を参考にしてはどうか。
福祉部長A 現在、市では第7次高齢者福祉計画・介護保険事業計画を策定中であり、この中で国の動向を把握し、周知も兼ねて掲載していきたい。市としても体制整備に向けて市民協議会や地域ケア会議等を活用しながら進めていくことを明記したい。その後、第8次計画では、志木市や川口市も参考にして具体的な検討をしていきたい。
(3)地域連携ネットワーク(協議会等)の設立と円滑な運用について。
こんのQ 市町村は地域連携ネットワークの中核機関等の設置等において積極的な役割を果たすとともに、地域の専門職団体等の協力も得て、地域連携ネットワークの設立と円滑な運営についても積極的な役割を果たすこととされている。戸田市の対応は。
福祉部長A 主な役割が①支援が必要な人の発見と支援、②早い段階からの相談支援体制整備、③本人意思決定や身上監護を重視した後見活動支援整備。地域連携ネットワークは、現在市で行っている民生委員の見守り訪問活動、地域包括ケアシステムの地域ケア会議、医療介護関係者等の「協議会」等と重複する。したがって、地域における体制整備はこれらの既存の資源・仕組みを活用していきたい。
こんのQ 閣議決定でも既存の機関を活用して構わないと示されているためこの判断でも構わないと考える。ただ、上記既存の機関で、地域連携ネットワークの主な役割である本人の意思決定や身上監護を重視した後見活動支援体制ができるのか疑問もある。既存の組織を活用し、どのように成年後見制度に繋げていくのか。
福祉部長A 地域ケア会議には専門家も入っているし、司法書士等を招くこともあり、実際に成年後見制度につながったこともある。今ある組織で役割を果たせると考える。
(4)審議会等合議制機関の設置について。
こんのQ 促進法23条2項によれば、市町村は審議会等合議制機関の設置が努力義務となっている。戸田市の対応は。
福祉部長A 審議会等合議制機関は、市町村計画の検討・作成を進めるほか、取組状況の点検・評価を継続的に行うことが期待されている。「総合介護福祉市民協議会」等既存の審議会を活用していきたい。具体的には、「第7次高齢者福祉計画・介護保険事業計画」にも位置付けて社会福祉協議会等とも調整を行っていきたい。
こんのQ 「総合介護福祉市民協議会」の委員構成及び任期は。
福祉部長A 委員は12人。大学教授、医師、歯科医師、司法書士、介護従事者(2人)、市民委員(3人)、その他(3人)。平成30年度に改選がある。
こんのQ 平成30年度の改正時に、弁護士会、司法書士会、行政書士会、社会福祉会等、成年後見制度について法律的・福祉的視点を持つ専門家について厚みを持たせ審議を深めることはできないか。
福祉部長A 成年後見制度は戸田市としても重点的に考えていく事項である。委員改選にあたり、専門家も参加についても参考にして進めていきたい。
こんのQ 第7次高齢者福祉計画・介護保険事業計画の中でしっかりと位置づけをして検討していただきたい。
福祉部長A 計画策定の途中であり具体的なものは決まっているわけではないが、これまで成年後見制度についてはわずか2、3行だった。これからはきちんとした位置づけをした中で市の方向性がわかる取り扱いをしていきたい。
こんのQ 成年後見制度構築にあたっては、市ないし委託を受けた期間が中核機関として位置付けられることが重要だ。1回目の答弁で、中核機関としての答弁がなかったのが気になる。市の中核機関についての考えを伺いたい。
福祉部長A 当然地域ケア会議等取り組んでいるが、一番やらないといけないのは判断能力が落ちてきた方々の意志に基づく支援であり、行政その他周囲の者がどう支援していくかということだ。人数も増えていくだろう。ネットワーク等、市が中核として検討ができる場を持っていかなければならないと考えている。
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成年後見については、国では法律もでき大きく一歩前進しました。その中で市町村他関係団体にはそれぞれ取組みが求められています。市区町村に対して課されているものはあくまで努力義務であるものの、戸田市では「成年後見制度利用促進計画」について「国の動向を注視し、先進市等の取組状況も把握しながら進めて参る」という前向きな姿勢を示したものと思います。今後、しっかりと国の工程表に基づいて進めていただけるよう求めていきたいと思います。