今日は質疑で、私も1件通告を出しています。
事例を簡単にご説明すると、下記の通りです。
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昭和33年 A氏が市と市有地を交換するときに、市有地を自己所有と勘違いしてB氏ら3人に賃貸
昭和47年 賃貸している土地が市有地であることが発覚
平成19年までの間、市から特に交渉せず
平成20年 市が交渉を開始し、その後3人中2人が解決
その後、B氏と民事調停をするも不調に終わる
平成29年4月 訴訟提起
平成29年7月 第1回口頭弁論
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和解へ
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この和解案について、質問をしました。
◇議案第74号 訴訟上の和解について
(1)
こんの:被告が本件土地を市の土地である旨を認めているにもかかわらず、なぜ、市は、勝訴判決を得るために訴訟を継続したり、被告が原告の請求(訴訟物)に理由があると認める陳述である「請求の認諾」を求めたりするのではなく、両当事者が互いに譲り合い紛争を解決する、合意である「和解」をするのか。また、「和解」において、市が譲歩する点はどこか。
財務部長:昭和33年以降、長年に事実上の占有が継続しており、民事調停において時効取得を主張する等解決が困難だったが、市は退去を認めさせることを最優先に考え、この点について和解が図れる見込みとなったため和解を行った。訴訟継続については勝訴に向けた不確定要素があるため難しく、請求の認諾については被告側が退去は認めたものの賃料相当損害金支払い等については認めていないため難しい。和解においては、市は建物収去及び退去までの期間的な猶予を設けた点、損害金請求を行わない点を譲歩した。
(2)
こんの:和解内容によれば、「本件建物」を被告が自己の費用にて収去し、本件土地を明け渡すことが含まれている。被告が和解内容に従わない場合に、市は強制執行を行う考えか。
財務部長:万一、従わない場合については、明渡しについて強制執行が可能であり、また賃料相当損害金についても被告の資産を差し押さえることによる強制執行が可能であるため、そのような事態となった場合には、適切に対処して参る。
(3)
こんの:これまでの長年の不法占有について、市は不当利得返還請求または損害賠償請求等を行う考えか。
財務部長:これまでの経過や他の占有者の解決状況も踏まえ、請求しないこととした。
こんの:問題が発覚して以降、市が適切に当該市有地を管理していれば得られたでろう金額は。
財務部長:昭和47年当時の賃借料が不明であるため、算定困難。
こんの:「算定困難」というが、和解により紛争解決をすることの是非を審議する中で、得られたであろう金額を知ることは必要だ。切り口を変えて再度伺う。現在の市の基準に照らして、同程度の土地(不法占有された土地全体)を同程度の期間賃貸したら、得られる金額は。
財務部長:不法占有(3者含めて)されていた土地は約705平方メートル、1平方メートル当たり単価約303円で、総額約1億1500万円になる。
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和解という手段で紛争解決を図ることは理解できますが、私が理解できなかったのは、問題が発覚して以降、市が適切に当該市有地を管理していれば得られたであろう金額について担当課が「算定困難」とし、具体的な金額を算出していないことです。
その理由は、昭和47年当時の賃借料が不明であることとし、確かに正確な金額の把握が難しいのはわかります。
しかし、和解により紛争を解決する是非を審議するにあたり、問題が発覚して以降、市が適切に管理していれば、本来市が得られたであろう金額を知ることは必要だと考えます。
そこで、仮に現在の市の基準に基づけばどのくらいになるのか、切り口を変えて再質問をしたところ、「総額約1億1500万円」ということが明らかになりました。
ただの「質疑」ではありますが、キレキレの質疑だったように思います。
過去のことを蒸し返しても仕方はありませんが、問題が発覚して以降、市が適切に対応しなかったために市に一定程度の損害が生じたことは事実で、この点は大変残念です。
ただ、これで長年の懸案事項が解決に向けて一歩前進したと思います。