3 子育て政策の充実を
(1)産前産後ケアや産後健診の見直し・拡充を
質問に入る前に、私事で恐縮ですが、昨年12月に第一子を出産しました。現職の議員の任期中の妊娠・出産に対しては賛否様々なご意見があるかと思いますが、県議会や関係者の皆様方のご理解・ご協力を頂戴し、無事出産し、議会に復帰できましたことを感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
今回は私自身が妊娠・出産を経験したことを通して、周りのお母さんたちの声を届けたいと思います。
妊産婦の死亡原因の第1位は自殺です。平成25年、26年の2年間に、厚生労働科学研究班が実施した調査では、妊娠中及び産後1年未満の死亡件数357件のうち、自殺は102件と最も多くなっています。出産は全治数か月もの事故に遭ったのと同じくらい女性の心身にダメージを与えると言われますが、これまでは里帰りをして実家に頼ったり、本人が「母親だから」という気概一つで乗り切ってきたように思います。しかし、共働き・核家族化が進み、産後の職場復帰が早まる中で、今後は産前産後の行政のサポートを最低限の公的インフラとして整えていく必要があると強く感じています。
産前産後事業はまだ始まって日が浅く、母子保健法上、基本的に市町村を実施主体として、国・県・市の制度設計を作っている最中です。県では、平成29年度より、エジンバラ産後うつ病質問票いわゆるEPDS等を用いた市町村に対し助成を行う「産後うつケア推進事業」と、出産後間もない時期の身体と心の健康状態を確認する「産後健診推進事業」の2つの事業を行っています。しかし、県の「産後うつケア推進事業」は、現在15自治体と少なく、平成29年度の事業開始以来、1000万円強の予算がついていますが、毎年予算執行率は40%程度です。また「産後健診推進事業」についても、現在7自治体と更に少なく、2000万円強の予算がついていますが、毎年予算執行率は50%程度です。県内では63市町村のうち53市町村が産後健診事業を行っていません。
現に、私自身について言えば、埼玉県内で出産をしましたが、産後うつの質問票チェックも受けていませんし、産後健診も全額自己負担で受診をしました。これは私に限ったことではなく、県内の多くの方が同じ状況です。特にコロナ禍においては、立会出産や入院中の面会の制限、乳幼児健診の中止や延期、児童館等の閉鎖など、妊産婦が孤立している現状があります。たくさんの妊産婦さんやお母さんが切実にサポートを求めています。しかしながら、県内の自治体の産前産後事業は進んでおらず、毎年多くの予算が余っている状況です。そして、産前のケアは県事業としては支援対象ではありません。私は県の事業が大変意義のあるものだと思っているからこそ、このミスマッチを非常に問題に感じています。
確かに、母子保健事業の中で、産前産後ケアは市町村が主たる実施主体です。しかし、市町村には実際の出生数の関係や財政力・人員の関係で限界があります。だからこそ、県が主導して取り組む必要があると考えます。県事業の現状を顧みて、今一度、産前産後にどのような事業を実施するべきか、市町村の声を聞いて補助条件を緩和するなど、制度を見直す必要があると考えますが、保健医療部長の御所見をお伺いします。
また、「産後ケア事業」について、私が県内市町村の実施状況について調査をしたところ、原則として全員にEPDS検査を行っている自治体は限られており、医療機関からの連絡等があった場合のみEPDS検査を行っている自治体が数多くありました。しかし、EPDS検査は、自覚症状がない産婦に産後うつの傾向がないかチェックをするスクリーニングの意味があります。産後うつは重症化すると子供への虐待や自殺などにつながるリスクがあります。そのようなことを防ぐためにも、原則として全員にEPDS検査を実施するよう市町村へ働きかけをできないか、保健医療部長にお伺いします。
次に、産後支援機能についてです。山梨県では県が主導し、新たな施設を作りましたが、必ずしも施設を作ることに限定せずとも、出産に伴う入院の延泊を可能にしたり、産院や助産院等にその機能を与えたりするなどソフト面での産後支援も大切です。民間では独自にオンライン相談会やライン相談をしたり、助産師さんが自宅に出向き、沐浴や授乳のやり方を教える事業が行われており、これに助けられている母親も多くいます。妊産婦に対するサポートをより手厚く拡充させるためにも、もっと民間の力を活用する必要があると考えますが、保健医療部長の御所見をお伺いします。
<保健医療部長>
次に、御質問3「子育て政策の充実について」の(1)「産前産後ケアや産後健診の見直し・拡充を」についてお答えを申し上げます。
まず、「県事業の補助条件を緩和することなど制度の見直しについて」です。
国庫補助事業の産後うつ病のスクリーニング検査であるEPDSと産後健診への助成は、宿泊や訪問による支援を行う産後ケア事業も併せて実施するという厳しい要件があるため、取組む市町村は極めて少ない状況です。
このため県では、市町村がより取組みやすくなるよう、EPDSを実施する事業と、産後健診の費用を助成する事業を独自に実施しています。
事業を実施する市町村は年々増えておりますが、まだまだ少ない状況です。
事業実施市町村の少ない要因の一つとして、事業における事務の負担が大きいことが挙げられます。
そこで、例えば産後健診の契約事務を県が代行するなど、市町村の意見を聞きながら事務負担の軽減につながる見直しを行い、より多くの市町村が事業を実施できるよう、努めてまいります。
次に、「原則全員にEPDSを実施するよう市町村へ働きかけをできないか」についてです。
令和元年度に全産婦を対象にEPDSを実施したのは36市町(しまち)、一部の産婦へ実施したのは25市町村、残る2市町(しまち)はEPDS以外の方法で産婦の精神状態の確認を行っています。
産後うつの早期発見、支援には、EPDSなどによるスクリーニング検査は重要であり、全産婦に実施することが望ましいと考えております。
このため、毎年市町村の職員を対象に、EPDSの必要性や検査の適切な実施について研修会を行っております。
全産婦のEPDSの実施に向け、市町村の実情に合わせた、きめ細やかな支援を行ってまいります。
次に「サポートを手厚く拡充させるためにも、もっと民間を活用する必要があると考える」についてです。
産前産後のサポートは、個別訪問による相談支援や授乳指導などを行う事業、病院などを活用し宿泊により産婦を支援する事業などがあります。
県内においては、市町村職員による支援のほか、助産所や医療機関、NPO法人などの民間の力を活用している事例もあります。
一方で、産後のサポートに活用できる民間の資源が少ない市町村もあり、近隣との連携が必要な場合も考えられます。
このため、産後サポートの実施機関からアドバイザーを招き、地域別に市町村が相互に活用できる民間の資源や先進事例の共有を図る機会を設けるなど、産前産後のサポートが充実するよう努めてまいります。