(1)地域保健医療計画の「多様な精神疾患等」の一覧表に位置付け、実態把握と支援を
高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、社会的行動障害等を起こす障害です。
国は、第7次医療計画において、改正精神保健福祉法に基づく「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」において、高次脳機能障害を自殺や依存症、てんかん等と並び、「多様な精神疾患等」の一つとして位置づけています。
しかし、これを受けた埼玉県の地域保健医療計画では、高次脳機能障害は「精神科のみではなく他の診療科にもまたがる」との理由から、「多様な精神疾患等」の一覧表から高次脳機能障害を除外し、福祉部所管の埼玉県総合リハビリテーションセンターでの対応としています。
私は、県内の当事者の実態把握に大きく乖離があること、県内の当事者・支援団体からの長年の強い要望があること、他都道府県の多数が高次脳機能障害を地域保健医療計画に位置付けている現状を加味し、埼玉県においても国の指針通り、高次脳機能障害を「多様な精神疾患等」の一覧表に含めるべきであり、その上で、福祉部と連携して実態把握をし、支援ができる体制を整えるべきだと考えますが、保健医療部長にお伺いいたします。
他方、県では地域保健医療計画に位置付けずに、福祉部が独自に作成した「高次脳機能障害に対応できる医療機関一覧」がありますが、この一覧には地域保健医療計画では示されている拠点医療機関が示されていません。高次脳機能障害についても、圏域ごとに拠点医療機関を整備し、連絡調整会議を実施する等体制整備をすべきだと考えますが、福祉部長にお伺いいたします。
福祉部長:金野桃子議員の御質問4「高次脳機能障害について」の(1)「地域保健医療計画の「多様な精神疾患等」の一覧表に位置付け、実態把握と支援を」のうち「高次脳機能障害についても、圏域ごとに拠点医療機関を整備すべき」についてお答えを申しあげます。
拠点医療機関は、地域で適切な医療を提供するため、関係機関との連携や症状悪化時等の個別相談、研修の企画提供などを行う病院です。
県内には、高次脳機能障害に関する拠点医療機関はないものの、県総合リハビリテーションセンターが高次脳機能障害支援センターとして、各種相談に対応するとともに、市町村や地域の相談支援事業所等への技術的支援などを行っております。
さらに、県西部と県東部の2カ所の医療機関が相談対応を行っており、地域の支援機能を担っています。
議員お話の圏域ごとの整備については、県としては現在の支援センターを核として、まずは身近な地域で対応できるよう、地域の医療機関の数を増やしていくことが必要と考えています。
今後、地域の医療機関向けの専門研修を一層充実させることで、診療項目の拡大や、より高度な医療を提供できる機関の拡充を図り、県の高次脳機能障害に関する支援体制を整備してまいります。
こんの:再質問させていただきます。4 高次脳機能障害について(1)について
地域保健医療計画では、圏域ごとに協議会が立ち上げられ、連絡調整会議などを行い、圏域別取組をしています。
「ネットワーク」というのは、地域保健医療計画と同程度のもの、つまり圏域ごとに協議会や連絡調整会議などを行い、取り組みを行うものなのか、福祉部長にお伺いします。
福祉部長:御質問4「高次脳機能障害について」の(1)「地域保健医療計画の「多様な精神疾患等」の一覧表に位置付け、実態把握と支援を」の再質問にお答えを申しあげます。
県では、身近な地域で高次脳機能障害者に対応することができることが重要であり、まずは地域の医療機関の数を増やしていくことが必要と考えております。
拠点医療機関の整備に関しましては、高次脳機能障害が診療できる医療機関の拡充を図り、地域での体制が整った上で、必要に応じ検討してまいりたいと考えております。
この場合、医療機関の拡充にあたっては、議員お話の会議体や圏域ごとの取組みなども検討してまいります。
(2)小児の高次脳機能障害の支援拠点を
県は、高次脳機能障害は県リハで対応することとしていますが、県リハには小児科がありません。確かに県が作成した「高次脳機能障害に対応できる医療機関一覧」には個々の医療機関の対応可能な年齢の記載がありますが、私は、個々の医療機関だけではなく、それらを総合的に支援する拠点を設置するべきと考えます。
小児の高次脳機能障害とは、例えば突然の交通事故等に遭い、記憶・行動障害等がある場合ですが、私のもとには、県内の小児の高次脳機能障害の保護者の方から、県リハに相談したら「小児は対象外」と断られ、発達障害総合支援センターに相談したら「高次脳機能障害は対象外」と断られ、小児の高次脳機能障害に対応できる千葉県や神奈川県の県リハに頼らざるを得ず、家族でマンスリーマンションなどを借りて治療にあたっているという切実な声が数多く届いています。
回復期リハビリ病棟と復学後の教育機関との連携、兄弟児支援、成人支援へのスムーズな移行をできるような支援拠点を県内に早急に設置するべきと考えますが、福祉部長にお伺いいたします。
福祉部長:次に、(2)「小児の高次脳機能障害の支援拠点を」についてでございます。
交通事故などにより脳に損傷を受け、記憶力や注意力が低下するなどの高次脳機能障害を抱えた子供たちに対しては、その特性に応じて早期に支援していくことが求められます。
現在、県の支援センターでは、本人やその家族からの相談に応じ、療育を必要とする場合には専門の支援機関につないでいるところです。
しかしながら、現状は障害児を診療できる医療機関や障害特性に応じて認知機能やコミュニケーション能力を高める訓練を行う療育施設などが十分にあるとはいえない状況です。
また、障害児への支援ニーズは発達段階に応じて多種多様であり、身近な地域において医療、福祉、教育等の関係機関が連携して取り組む体制も求められております。
県といたしましては、今後、医療機関や療育施設を対象とした研修等により、対応できる支援機関を拡充するとともに、その支援機関のネットワークを構築することで、各地域で高次脳機能障害児への支援が実施できるよう体制を整備してまいります。
こんの:再質問させていただきます。4 高次脳機能障害について(2)について
高次脳機能障害に対応できる医療機関には、確かに年齢の表記があります。私が確認したところ、全85医療機関のうち、幼児以上を見られるのは3か所、小学生以上が8か所、中学生以上が7か所、高校生以上が12か所です。
しかし、この中には町のクリニック等も含まれています。小児の高次脳機能障害は、回復期リハビリ病棟、復学後との教育機関との連携、成人支援への移行等総合的な支援が必要だからこそ千葉県や神奈川県では県リハが小児の支援拠点として診療にあたっているのだと思います。
埼玉県では、小児の高次脳機能障害も、支援拠点なくして一覧表に記載の個々の医療機関が対応可能と考えているのか、どのように当事者の声を聴き、必要な支援を行うのか、福祉部長にお伺いします。
福祉部長:次に御質問4「高次脳機能障害について」の(2)「小児の高次脳機能障害の支援拠点を」の再質問にお答え申しあげます。
高次脳機能障害児への支援ニーズは発達段階に応じて多様であり、身近な地域において医療、福祉、教育等の関係機関が連携して取り組む体制が求められております。
県としては、高次脳機能障害児が身近な地域で適切な支援が受けられるようにすることが必要と考えております。
そのため、地域の医療機関や療育機関の拡充や連携強化を進めることにより、各地域での高次脳機能障害児への支援拠点としての機能を整備してまいります。
支援機関の拠点については、県総合リハビリテーションセンターがまずは担い、これに障害者福祉推進課も携わって、関係機関の話も聞きながら進めてまいりたいと存じます。
こんの:再々質問させていただきます。4 高次脳機能障害について(2)について
支援機関の拠点について、県総合リハビリテーションセンターがまずは担うと答弁されたが、県総合リハビリテーションセンターには小児科はありません。県総合リハビリテーションセンターの中に小児科に担当できるような形にして、連携していくのか、福祉部長に再答弁を求めます。
福祉部長:御質問4「高次脳機能障害について」の(2)「小児の高次脳機能障害の支援拠点を」の再々質問にお答え申しあげます。
議員のお話のように、県総合リハビリテーションセンターには、小児科はありません。
そこで、各地域にある医療機関と連携しながら、体制づくりを進めてまいりたいと考えております。